修繕工事などの見学会
事例紹介

コアマンション江平Ⅱ改修工事

次の世代に引き渡せるマンション

コアマンション江平Ⅱ改修工事
マンションの資産価値を維持し、住環境を向上することを目的にグレードアップした大規模改修工事を管理組合主導にて実施

今回の計画から工事着手までの流れ

  • 1

    第14回通常総会 マンション劣化診断・長期修繕計画書作成を宮管連建物コンサルタントに委託。
  • 2

    コンサルタントの案内で屋上等の共用部分を見て回り、その後、劣化状況調査報告書と長期修繕計画書の説明会。
  • 3

    臨時総会 修繕積立金の月額1万円の値上げ議案は、賛成多数で承認 修繕積立金1戸当たり平均14,500円。
  • 4

    第15回通常総会 第1回大規模改修工事の実施議案が4分3以上賛成多数で承認。
    同総会にてコンサルタントへの設計管理委託を依頼する件及び修繕委員会を設置する議案も承認。
  • 5

    理事会及び修繕委員会を合同開催する。コンサルタントを交えて今後のスケジュールを話し合う。
  • 6

    改修工事で使用する材料の提案を、塗料・防水材メーカーなど8社の担当者がプレゼンテーションを実施。
    第2回修繕委員会 8社のプレゼンテーションを聞いた後、仕様書に採用するメーカー決定。
  • 7

    第3回修繕委員会 共通仕様書(図面・特記仕様書・見積要項書)決定する。県内外工事業者5社(宮管連賛助会員)へ共通仕様書にて見積もりを依頼。
  • 8

    宮管連主催アーバン都城大規模改修工事現場見学会に参加して、コンサルタントや業者などからの説明を聞く。

    第4回修繕委員会 送付された5社の見積もりを開封して、見積内容を検討した結果、全会一致でヒアリングに参加する3業者決定。

    第5回修繕委員会 ヒアリング参加業者3社の説明を聞いた後、工事の提案内容や資料が良かったので、臨時総会に推薦する工事業者に全会一致で(株)三舟建設に決定。

  • 9

    臨時総会 工事業者に(株)三舟建設が決定する。

    管理組合主催の組合員が参加した工事説明会が、コンサルタントや(株)三舟建設及び協力業者が出席した中で行われ、居住者や近隣に配慮する旨の内容が示された。

  • 10

    修繕委員会、コンサルタント、(株)三舟建設などが出席して、工事期間中の無事故を願って安全祈願祭を行う。

    コアマンション江平Ⅱ大規模改修工事始まる。

  • 11

    修繕委員会がマンション内を点検した後、工事完了の報告を(株)三舟建設から受ける。
  • 12

    マンション居住者のコミュニティと改修工事関係者の慰労を労って竣工祝いを開催。

工事に入る前の研修会など

住民説明会、改修工事研修会、安全祈願祭、塗料・防水材メーカーメーカーによる仕様説明会

工事に着手

工事開始に際して、最初に行われる作業が仮設工事である。まず、居住者の全車輌を別の駐車場に移動し、大型クレーンを使って南面から外部足場を架ける作業に取り掛かる。一方、東側駐車場には現場事務所を設置して管理組合が指定した現場監督が常駐する。足場架設することにより、外部からの侵入が容易になるので、防犯対策として足場出入り口には、扉を設け錠を付けた。さらに、ボイスセンサーとセンサーライトを取り付けた。

マンション全体を覆うネットはメッシュシートを指定し、汚れが目立つ場合は取り替えることを指示して作業に入る。この日からコインランドリーに通う日々が続くとネットを取り外した後、住民(女性)から聞かされた。事前の住民説明会では、ネットを張るのは近隣に塗料などが飛散しないように、また、作業員の安全確保が目的であることを伝えていたので大きな問題には発展しなかった。

居住者への伝達手段として、週単位の全体の作業スケジュールを記入する掲示板を1階に設置した。また、各階には作業内容や洗濯を干すことが出来る日などの情報を伝えるために、それぞれの階にも掲示板を設けた。さらに、住民の要望や問い合わせに対応するために連絡箱の設置と緊急連絡先の掲示や、工事に従事する関係者には名札を付けた上で、顔写真をエントランスホールに掲示して、不審者の侵入を阻止することに努めた。

家庭で不要になりバルコニーに置いてある廃棄物を処理するには、捨てる場所を確保する必要があり、コンテナを用意し、住民自ら運び出すようにお願いした。また、バルコニーは共用部分であることを伝え、改修工事に支障が出ないよう決められた日までにバルコニーを片付けるように広報誌を活用して協力を仰いだ。

劣化調査

足場架設した後、マンション全体を調査確認して劣化部分の全容を把握

中性化試験の工程

コア抜き作業

フェノールフタレイン
溶液を噴霧

中性化探さの測定

赤色部分がアルカリ性

躯体補修

タイルの貼替、樹脂モルタル充填、アンカーピン注入

目視検査や打診検査で発覚した外壁タイルの表面の損傷や下地の空洞化は、その部分のタイルを撤去して新しいタイルを貼る。また、タイルの浮きに関しては、その部分にドリルで孔を開け、エポキシ樹脂を注入して対処したり、新しいタイルを貼り付つけることもした。

モルタルの浮き補修は、穿孔ドリルで躯体まで注入孔を開けて、アンカーピンをコンクリート躯体まで打ち込み、その後エポキシ樹脂を充填することにより、躯体に接着させ剥離を防止する。

爆裂は、コンクリートやモルタルの被り厚が薄いため雨水などが浸入することで発錆し、錆によって鉄筋の体積が膨張することで周囲のコンクリートを押し出し剥落する。修復するには錆びている鉄筋の裏側まで斫りだし、錆落としのケレン作業を行い、防錆処理を施した後、ポリマーセメントモルタルを充填する。

外壁・バルコニー・ルーフバルコニー、屋上などの場所に付着した、汚れ・ホコリ・藻・コケ・カビ等及び浮いている塗膜の除去を高圧水洗浄機を使って丹念に洗い落とす。汚れを落とさないと塗り替えても汚れの上に膜を貼るだけになる。

防水工事

サッシ、共用廊下、外階段、バルコニー、ルーフバルコニー、屋根、外壁など

バルコニーの防水工事では、まずサッシのシーリングを打ち替える。既存のシーリングをカッターを使って、全て取り除き、次にサッシと外壁の間にマスキングテープを貼って周りが汚れないようにしてから、新しいシーリング材を隙間なく充填する。 この際、空気が混入しないように注意する。その後、打ち込んだシーリングをヘラで均一にする。

バルコニーのサッシの下段部分には、入念な防水処理が施される。最初にプライマーを塗った後、ウレタン防水材を2回塗り、その上にトップコートを塗って完成する。ただし立ち上がりの部分は、ウレタン防水材を塗布しても下に流れ落ちるので、膜厚の確保が難しい作業である。ここの部分は重要な作業であり、手を抜くと雨水の侵入経路となる。

外壁にあるタイルとタイル、タイルとコンクリートとの継ぎ目にはシーリング材が充填され、雨水の浸入を防いでいる。劣化したシーリングを取り除き、撤去した継ぎ目にマスキングテープをして、新しいシーリング材を充填し打ち替えた後、ヘラで均一にする。

屋上に出入りする外階段だけは、ウレタン塗膜防水で仕上げいてるが、その他の外階段は、両端に防水処理が終わった後、踊り場、踏面、蹴上げには防滑性階段用床材シートで仕上ている。外階段も防水して躯体や天井面への浸水を防止する必要性から防水工事を施している。

外階段ウレタン防水材工事工程

1.モルタルにプライマーで下塗り
2.中塗り
3.上塗り

1.ケレン作業(錆落とし)
2.下塗り(2回)
3.中塗り
4.上塗り

床工事

モルタル仕上げだった共用廊下、外階段、バルコニーなどに防滑性塩ビシート貼る

紫外線に強く、優れた耐候性で屋上・バルコニーなど完全屋外での使用可能製品なので、防水処理が終わった共用通路・外階段・バルコニー・ルーフバルコニーには、夜間の足音の問題や美観のために、防滑性塩ビシートを貼った。また、貼り終わった後は、すぐに歩行できるので、居住者からも感謝の言葉を頂いた。

Before After

共用通路

外階段

バルコニー

ルーフバルコニー

エントランス内装工事

床、壁、天井、オートロック式自動ドアー、集合郵便受、宅配ボックス

修繕委員会ではエントランス内装工事については、床・壁・天井の仕上げを含めたデザインと機能性を全体的に見直し、グレードアップを図った。例えば、天井を上げて高くすることで広く感じられるし、ステンレス製オートロック式自動ドアへの取り替えにもつながった。以上のような内装工事を行う際には騒音・臭気・粉塵対策を考慮した。特に床のタイルの貼り替えは、既存のタイルの上に新しいタイルを貼り付けることで、工事施工時の騒音問題を解決した。

最近では、宅配ボックスを備えたマンションが分譲販売されているが、当マンションでも現在の居住水準、生活水準に見合うような付加価値機能を積極的に取り入れた。まず、エントランス内には不在時にも荷物を受け取れる宅配ボックスを設置したり、集合郵便受の取替えなどして設備を整えた。

Before After

オートロック式自動ドア

集合郵便受 宅配ボックス

インターホン

1階エレベーター扉

玄 関

アプローチタイル

自転車置場

受水槽

各種検査

塗膜防水膜厚検査、塗布量テスト、空き缶検査、完成検査など

防水工事の仕上がりを確認するために、ウレタン塗膜の厚さを測る「膜厚計」を使って膜厚を計測する。検査においては、膜厚、被り、見切りなど、細かな部分まで確認が必要である。ウレタン塗膜防水は比較的柔らかい材料なので、鋭利なもので引っ掻いたりすると塗膜が破れてしまう。また、タバコの火が落ちると溶けて穴があいたりするので、特に居住者には、バルコニーの使用法について事前の説明が必要となる。

塗料の種類は非常に多く、分類や名前もたくさんある。今回使用する各塗材の適正量を確認するため塗布量テストを施工した。管理組合理事長、宮管連建設コンサルタント、現場監督、塗料メーカー、作業に携わる関係者を集めて実施した。テスト施工により塗布量が決定され、今後の塗料使用数量をチェックする目安になる。

コンサンルタント及び現場監督が立会いの中で、防水工事、塗装工事を担当した関係者から防水、塗装材料缶の空缶数を検査する。入荷した時に検査した材料が、適正に使用されているかも含めて調査する。

外部足場を解体する直前には、居住者に調査表を配布し、各住戸廻りの工事に不具合な場所はないか、また、手直しをする箇所はないかアンケート形式で記述をお願いした。コンサルタントの検査とは別に修繕委員会による検査がある。 現場監督の案内で工事途中にヘルメットを着用して足場に登って作業内容を確認する解体前検査や、工事完了を確認する完成検査があった。

竣工後

大規模改修工事見学会開催、竣工祝い、新聞報道など

宮管連主催の大規模改修工事見学会を開催した。参加者らは、宮管連建物コンサルタントから説明を聞きながらマンションを見学して、エントランス廻り、防水工事、塗装工事の過程を熱心に写真に収めていた。見学後の質疑応答の時間では、改修工事に係わる技術面で専門的な質問が集中した。今回の現場見学会は、正会員の管理組合に実例に基づき改修工事に関する知識を習得して欲しいとの考えから実施している。

平成17年1月30日組合員の懇親会と改修工事に携わった関係者が集う竣工祝いを催した。管理組合主導の大規模改修工事は、自分達の大切な資産であるマンションを維持管理するという自覚と責任を確かめる絶好の機会でもあり、それぞれ出席者が工事に関する意見を述べた。また、今回が初めての懇親会だったので、住民同士の親睦を深めることにもつながった。

平成16年12月20日、コアマンション江平Ⅱの大規模改修工事が宮崎日日新聞で報道される。「マンション大規模修繕計画、住民主導型に注目」

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